浦戸諸島に8 月の一ヶ月間TANeFUNe でおじゃまして、
おちゃっこ飲み(東北地方ではお茶を飲みながらおしゃべりをする事をこう呼ぶ)を開き、
乗船体験やスケッチをする『TANeFUNe カフェ』というスタイルで、
島の人達や島に訪れる人達と交流しました。
日・月曜は桂島、火・水曜は朴島、木曜は寒風沢島、金曜は石浜、土曜は野々島と曜日ごとに顔を出し、
カフェと言ってもいわゆるコーヒーやスイーツなどを販売するのではなく、
お茶を飲みながら網を編みながらお話をして、
島の人から聞いた話や頂いたモノなどがカフェのメニューとなっていくのです。
僕たちTANeFUNe クルーが浦戸諸島に来てまず最初に衝撃を受けたのが、菜の花の種のこと。
いわゆる菜種ですが、これを育てると白菜になるというのです(※)。
白菜の種、菜種、菜の花。
言われてみると合点が行くけれど、とても驚き、
今までとは違う目線で菜の花というモノを考えるようになりました。
浦戸諸島では渡辺採種場という種屋さんの依頼を受けて、
白菜の種を採るための菜の花を昔から育てていて、今でこそ少なくなったものの
3、40 年前はどの島も綺麗にびっしりと菜の花が咲いていたそう。
いただいた菜の花の種などとともに、こうしたエピソードが「メニュー」となり、
一ヶ月間どんどんと増えていきます。
さらにこれらは「宝物」としてTANeFUNe に積み込まれ、
次の土地へと運ばれます。これらのメニューをお茶受け代わりや
話のタネにして、美味しい冷茶を飲みながらの交流となりました。
提供していた冷茶は私、喜多のこだわり。
塩釜の日本茶専門店「矢部園」さんから学んだ淹れ方で、
急須に香りの強い茶葉をいれ、そこに急須いっぱいの氷をいれ水を注ぎます。
お母ちゃん達は、「それで出るの〜?」と不思議顔。
おもむろに急須をシェイクして氷のカラシャココロシャカと心地いい涼しげな音が鳴り、
ガラスのショットグラスに注ぐと「わ〜!綺麗!」と歓声をあげてくれました。
そして「美味しい!!」と。
この冷茶は、「海からの視点」を持つTANeFUNe のように、
日常をずらす素敵な役割を果たしてくれた気がします。
おちゃっこ飲みの合間には乗船体験。
島を少し回りながら海を感じながらいろいろな話を聞くことも、
とても面白いものでした。船が安全に航行できる海の道から魚が釣れるスポット、
陸からは見えない田んぼの跡地や海上の謎のシンボルマークなどなど、
目にしなければ考える事もできない、
興味すらわかない出来事に出会うことができたし、
陸からのアプローチ、海からのアプローチ、両方向から一つのスポットを見る行為は
単純に冒険心が芽生え、少し違う次元にいけるのです。
4 島5 地区はひとつひとつは近いけれど、端から端までは遠く感じるしサイズにも差があり、
島が違えばそれぞれの歴史や風土があることもだんだんと解ってきて、
浜などで拾った貝や石、小さな漁具の一部から違いや共通点を知る事もできました。
そして日常的に起こっている事や小さな変化などを島の人達とお話したり、
島外の人達にも話し伝えたりしました。
島の昔の話を聞いていると、やはり東日本大震災の前と後の話になることが多く、
島の人達にとっては海が生活の場であり、仕事場だったという事を深く実感できましたし、
太平洋を背にして塩釜湾に蓋をするように位置する浦戸諸島が、
塩釜や松島を津波から守ってきた歴史も、
船長としてTANeFUNe に積み込むことができたように思います。
※“菜の花”とは、アブラナの花及びカブ、白菜など近縁の菜類に咲く花の総称である。 アブラナ科の植物は交雑しやすいため、白菜の純粋種を採る目的により島で栽培されている。
喜多直人 (TANeFUNe 船長)