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航海日誌No.2「冴えた海」


2012年5月20日

昨夜は全国各地から種船の出港を見送りに来てくれた方々と
舞鶴で共に種船を作ってきた仲間と深夜まで出港と初航海とを祝って、3年間を振り返ると共に、
これからの航海に向けての課題や考え方について語り合ったため、今朝はゆっくりめで動きはじめた。

一般的なアートプロジェクトの規模で考えると昨日の出港式がエンディングであってもおかしくないくらいの盛り上がりがあった。
当然、その分のエネルギーが注がれたわけで、連日の早朝から深夜までの準備作業で、関係者の皆に疲労の色が濃い。
とはいえ、これからはじまるのである。今日は、これからの航海にむけて手がまわらなかったことのフォローをした。
種船と共に移動する種車にキャンプ用品などを積めるようにキャリアと箱を取り付ける改造や必要物品の整理、
詳細な航海計画を設計するための方法を考えたりといった仕事を手分けして行った。

夕方は停泊した種船のまわりで、宝箱に乗せて次の港に運ぶ宝箱の中身を、絵を描いたり、
漂流物を組み合わせて様々なものを作ったりした。宝箱には、「FROM THE SEA」「TO THE SEA」と書かれている。
港に着いた時は「FROM THE SEA」の宝箱を開け、港の人に中の宝を見てもらう。
そして港で会った人に港で見つけた宝や作った宝を「TO THE SEA」の宝箱に入れて次の港に運ぶ。
今日は竜宮浜漁港の宝が新たに宝箱に加わった。

日中、竜宮浜漁港を歩くと、浜辺で男衆が巨大な網を編んで修理している風景に出会った。
話を聞くと、春と秋、年に2回行う定置網の差し替え修理をしているそうだ。一つの編み目が30cm近くある。
これで小さなイワシを獲るという。魚は壁に出会うと沖に向かう修正があるそうだ。定置網は岸から沖に向かって真っすぐ網を張る。
イワシの目には30cmの編み目も壁に見えるようで、イワシは網に沿って沖に向かう。
網の終わりには袋型の網が設置されておりそこでイワシを回収する。そんな定置網の漁をこの辺りでは「あんこぐち」と言う。
大きく口を開けた鮟鱇(あんこう)のことらしい。魚が障害物に出会うと沖に向かうこと、大きな編み目も壁に見えること、

そのどちらもきっと長くつないできた漁師の経験の積み重ねで完成した方法論なのだろう。海で生きる人の根拠は常に経験と言い伝えである。

しばらくして、旅館の夕食で出すサザエの刺身を作るため、ひたすら金槌でサザエの殻を割り続けているおばあさんと出会った。
淡々と見事な手さばきでサザエの殻を割っている姿にしばし見とれた。おばあさんと貝の話になった。
おばあさんは旅館で出す牡蠣(かき)がどんなところで養殖されているのか、一度、太平洋側の海へ見に行ったそうだ。
おばあさんの言葉では
「船でどれだけ沖へ出ても海が冴えなくて、、、私には、あそこのものは食べられんと思うてね。
この辺の海はよう冴えとるからね。私は冴えた海のものしか食べれんのよ。だからお客さんにも出されへんでしょ」

竜宮浜漁港の海は冴えている。冴えているとは透き通っているという意味だ。
種船から海を覗くと、3m下の海底をゆっくりと這うアメフラシ(巨大なナメクジのような海牛の仲間)の姿がはっきりと眺められる。

明日は8:30に高浜漁港に向けて出港予定。

 

(テキスト:五十嵐靖晃/写真:喜多直人)

記録

日時 5月20日(日)20:30 天気 晴れ
現在地 竜宮浜漁港(小橋) 最高気温 25.0℃
緯度 35°33′727 最低気温 11.7℃
経度 135°23′967 湿度 42%
進行 停泊 風向
航海航路 停泊 風速 3m/s
気圧 1015.1hPa
航行距離 0海里(0km) 波高 0.5m
航行時速 0kt(0km/h) 降水量 0.0mm
出港時間 停泊 日の出 4:51
入港時間 停泊 日の入り 19:00
航海時間 停泊 満潮潮位 (2:54)18cm (12:59)25cm
船長 五十嵐 干潮潮位 (7:01)14cm (20:39)0cm
船員 日比野 菊地 喜多  随伴船  なし