2012年7月20日
7月7日に氷見に入港し、約2週間ぶりの航海に出た。
舞鶴から新潟までの全行程を考えると、氷見はちょうど中間地点。
舞鶴から氷見まで車で来てくれた人も、新潟から氷見まで車で来てくれた人も、どちらも所要時間は約4時間という。
能登半島を無しで考える陸の道で考えると確かに中間地点である。
能登半島を越えて行く海の道で考えると、能登半島先の輪島か狼煙辺りが中間地点になるのだろう。
とはいえ、一時TANeFUNeから離れていたので、気持の面からしても、いよいよ後半戦のスタートといった気分である。
クルーとTANeFUNeと再会したのは昨夜だったのだが、以外にもすんなりと入っていけた。
航海と交渉とに向かう船長としての責任感も緊張感も再び自然と沸き上がってくるものである。
そこにTANeFUNeと仲間がいるからなのだろう。
そして、ここまで、船づくりからはじまった、この航海をつないできた人達が思い浮かぶからなのだろう。
現場に行くことで心身にスイッチが入る。
人の記憶とは、想像力とは、そのきっかけを呼び起こすモノと人との関係とはすごいものである。
モノは記憶を呼び起こし、想像力を喚起する。
人はそれを力に変える。モノと人が持つ関係性から生まれる力である。
8時出港。
早朝にも関わらず氷見でお世話になった方々が集ってくださり、お礼の挨拶をして、TANeFUNe専用桟橋を離れた。
入港時も高さがギリギリであった比美乃江大橋をスムーズに通るため、
貯水槽にシートを敷いて大量の水を溜めておいてくれた作戦
(昔から氷見のこの辺りは川が増水して船が橋の下を通れない時は、水を入れて船を少し沈めて橋を通るのが常識とのこと)
が上手く行き、一瞬、橋の底にTANeFUNeの頭を擦る程度で無事に橋を通過。
遠くから拍手が聞こえた。
天候は曇りで、海はベタ凪、穏やかな航海であった。
今日、TANeFUNeに同乗してくれた地元女性の2人は、靴屋さんと魚屋さん。
ちなみに2人は今日初めて会った。
靴屋さんは、3年間の修行を終えて、6年前にお店を出し、今は1年先まで予約がいっぱいの、
その人の足の形に合った世界に1つだけの靴を作るオーダーメイドの靴屋さん。
魚屋さんは5年前から魚屋になり、競りの言葉を市場の現場で耳で聞いて学んで、
2年前から競りに出て自ら目利きをして気に入った魚を競り落とせるようになった、
毎日22時に寝て、朝5時に起きる魚屋さん。
2人とも、若くして、自らの技術で生きる女性である。
氷見はそんな美しい女性の生きる土地である。
TANeFUNeを操舵しながら、2人の仕事の話を聞き、ふと思った。
靴底の形と、魚の形と、船の形は似ている
。2人にその話をすると、一瞬、ぽかーんとしていたが、頷いてくれた。
モノの形は不思議である。モノは記憶を喚起させる。
その3つはどれも、前に進む形をしている。靴も、魚も、船も、その形から、自ずと前に進むという宿命がある。
それらは全て、留まらないから良いのである。
留まらない形と向き合う、氷見の人と共に、航海の後半戦は始まった。
海竜マリンパークに無事入港し、明日、随伴船を出していただけそうな方と交渉成立。
お昼は一緒にTANeFUNeに乗ってくれた魚屋さんに魚を食べに行った。
いつか靴も作ってもらおうと思う。明日は10時出港で、滑川漁港に航海予定。
(テキスト:五十嵐靖晃)
記録
日時 | 7月20日(金)20:00 | 天気 | 曇り |
現在地 | 海竜マリンパーク | 最高気温 | 25.5℃ |
緯度 | 36°46′294N | 最低気温 | 23.9℃ |
経度 | 137°08′180E | 湿度 | 85% |
進行 | 第22航海 | 風向 | 西南西 |
航海航路 | 氷見漁港→海竜マリンパーク | 風速 | 4m/s |
気圧 | 1009.7hPa | ||
航行距離 | 10.8海里(20km) | 波高 | 0.5m |
航行時速 | 7.0kt(13km/h) | 降水量 | 0.0mm |
出港時間 | 8:00 | 日の出 | 4:48 |
入港時間 | 9:45 | 日の入り | 19:06 |
航海時間 | 1.5時間 | 満潮潮位 | (4:48)41cm (15:05)48cm |
船長 | 五十嵐 | 干潮潮位 | (9:10)35cm (22:45)21cm |
船員 | 喜多 釣賀 土屋 青木 | 随伴船 | 政丸(曽田) |