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航海日誌No.43 「TANeFUNe伝説」


2012年6月30日

8時に輪島港出港。
今日の航海は高屋漁港で中継し、燃料補給と船員交代をして、狼煙漁港を目指す、
全行程24.3海里(45km)の比較的長距離の航海。
青天に恵まれ、波風もなく、ベタ凪。海面は水鏡のようで安全な航海であった。

輪島港を出ると、遠くに大量のつぶつぶが海面に浮いているのが見えた。

いったい何だろう?

近づいてみるとそれは、海面に浮かぶ水鳥の集団であることが分かった。
こんなに沢山の水鳥と海上で出会ったのは、この航海で初めてのことであった。
カモメだろうか?いや違う。よく見ると、舳倉島の展示室で見たあの鳥と同じ色形をしている。
オオミズナギドリではないか!オオミズナギドリは海洋性の鳥で、人のいる海岸近くには寄りつかないので、身近に見ることができない。
海の上でこそ出会える光景に感動した。休憩中に申し訳なかったが、船で近づくと、一斉に飛び立っていき、
またすぐ近くの海面に降りて、群れをつくりプカプカと浮いていた。オオミズナギドリは大水凪鳥とも書く。
波風に弱いTANeFUNeにとってありがたい名前の鳥である。
心の中で今後の航海の凪を大水凪鳥に祈った。

棚田の名勝地、“千枚田”を通る。陸班と連絡をとり、千枚田越しのTANeFUNeを撮影。
近くまで見に行ったが、海から見ると棚田の水面は当然見えないので、ただの斜面に見え、田んぼの数が何枚だか分からなかった。

千枚田 海から見ると 何枚だ

輪島から高屋までのゲストクルーは地元輪島市役所観光課の赤田さん。
赤田さんには輪島滞在中に宿や温泉や食事処を案内してもらったり、たいへんお世話になったので乗船してもらえて良かった。
航海中も海岸線にまつわるいろいろな話を聞かせてもらった。
その中の1つは義経伝説。海から洞窟のように見える岩場に船を隠して身を潜めたということだ。
小松の安宅住吉の勧進帳もそうだが、この航海はよく義経伝説に出会う。
義経の舟隠しと呼ばれる岸壁や、義経の射った矢が開けた岩穴などの話も出て来る。
これだけ伝説が残っていると、義経さんの移動(航海)は充分目立っていたのではないだろうかと、思ってしまう。
でも、情報があまり行き交わない時代だっただろうから、隣の村に行けば誰だか分からなかったのかもしれない。
そして、村の人は、いなくなった後で、あの人達が義経さんの一行だったらしいということを知ったのだろう。
TANeFUNeで行く我々も、充分に目立つし、港の人からしたら一体何者だ?という感じだろう。
義経伝説ほどではないだろうが、何か港で出会った人の心の中にTANeFUNe伝説を残せると面白い。
少なくとも、遊びとも漁とも違う、あの船の移動の意味はいったい何か?という問いという意味での
“何か”を残していることは違いない。
最近、過去に随伴船を出してくれた方から

「今はどこか?元気に航海しているか?」

と電話がくることがある。思いを電話で届けられる現在も、
思うことしかできなかった義経さんの時代の村人も、どこかを目指す移動者に対する、その思いは同じなのだろう。

11時、高屋港に到着。そこには、港周りの人が集まってきており、短い時間ではあったが、TANeFUNeに乗ってもらったり、
航海や船の話をしたり、みんなで記念写真を撮ったり、と温かい時間が流れた。TANeFUNe到着を楽しみにしてくれており、噂が流れたのが分かった。

輪島から乗船してくれた赤田さんは、輪島に帰る随伴船の平安丸に乗り込んだ。
板谷さんと赤田さんにお礼を伝え、2人を送り出した。

高屋から狼煙までは、番匠さんの娘さんであり、海の見える峠の茶屋“つばき茶屋”の看板娘である、
さとみちゃんにゲストクルーとして急遽乗ってもらうことになった。
ここからは番匠さんの栄光丸に随伴してもらい、狼煙漁港を目指す。
11時に高屋漁港を出港。

さとみちゃんは漁師と海女の娘なのだが、泳げない。
ご両親が忙しく海を教えてもらうことはなかったのが理由だそうだ。
そして、父親の船を海から見るのは初めてで、とても感動してくれ、何枚も海上を行く栄光丸の写真を撮っていた。
狼煙の灯台、禄剛埼灯台にさしかかると、

「何度もこの灯台には行ったことがあるけど、海から見るのは初めて、こんなふうに見えるんですね、すごい」

と、TANeFUNe冥利につきる言葉をいただいた。

輪島の赤田さんも言っていたが、TANeFUNeに乗って、
海から自分のいる場所を見ると、その見え方、感じ方はがらっと変わる。
今後も出来る限り多くのその土地の人に乗ってもらい、自分の場所から離れて、その場所を見てもらいたい。
なぜなら意識の変化という意味で、海は日常の延長線上にあり、一番遠くまで行くことができる場所だからである。

13時、狼煙漁港に無事入港。ここにも沢山の方が集まってきてくれていた。
海に突き出た桟橋から手を振り、TANeFUNeと共に走る子供。灯台の下で手を振るお母さん。
ウエルカムフラッグを持って金沢から駆けつけてきてくれた、明後日朝顔金沢チーム。そして地元、狼煙の方々。
船を係留してすぐに、この航海とTANeFUNeの紹介説明をさせてもらった。
そして子供達は船に乗り込み、クルーと会話しながら、思い思いの時間を過ごした。

明日から数日間、ここ狼煙漁港に停泊予定。

 

(テキスト:五十嵐靖晃)

記録

日時 6月30日(土)21:00 天気 晴れ
現在地 狼煙港 最高気温 18.5℃
緯度 37°31′560N 最低気温 16.3℃
経度 137°19′608E 湿度 90%
進行 第17航海 風向 北東
航海航路 輪島港→狼煙(高屋地区)
漁港→狼煙(狼煙地区)漁港
風速 3m/s
気圧 1011.3hPa
航行距離 24.3海里(45km) 波高 0.5m
航行時速 7.0kt(13km/h) 降水量 0.0mm
出港時間 8:00 日の出 4:35
入港時間 12:00 日の入り 19:17
航海時間 4.0時間 満潮潮位 (10:09)41cm (**:**)**cm
船長 五十嵐 干潮潮位 (3:40)30cm (18:14)15cm
船員 喜多 赤田→番匠(娘) 随伴船 平安丸(板谷)→栄光丸(番匠)

 

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