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航海日誌No.27 「川という海」


2012年6月14日

鷹巣港から福井港への随伴船は、遊漁船“福勢丸”の遊津さんに、
釣りに来るお客さんから当日に予約が入らなかったら随伴してもらえるという不確定の約束だったのだが、
その後、鷹巣港漁協の平野組合長が動いてくださり、
急遽“漁栄丸”の杉田さんが随伴船を出してくれることになった。
(その後、遊津さんに確認の連絡を入れたら、忙しくなったとのことで、ちょうどよかった)

13時出港に向けて、出港準備を整えて種船で待機。
1台の軽自動車が種船の側にやってきた。そこから、1人の強面の長身男性が出てきて、

長身男性:
「あの、三国港まで行く、随伴が必要の?」

五十嵐:
「はい!漁栄丸の杉田さんですか?」

長身男性:
「はい、そうです」

五十嵐:
「今日はよろしくお願いします!」

当日に会って、そのまま出港し随伴してもらうのは初めてのスタイルだったが、問題なく航行することができた。
随伴には平野組合長も同行してくださった。
平野組合長も、杉田さんも、ましてや今までお会いした“海の関係者”は皆、陸ではどこか無愛想で、強面な雰囲気がある。
ところが海の上、要するに船の上では非常にニコやかな感じがする。
何故かと考えると、想像ではあるが、彼らにとっての仕事場であり、主戦場であり、自由がある場所は海の船の上だからなのではないだろうか。
海の上で会えると、その人が持つ陸では見えづらい強さの向こうにある優しさや、人の良さがそのまま伝わってくるようである。

順調な航海を終え、福井港に入る。
今までの港と大きく違う点は、川があることである。
福井港には九頭竜川という大きな川が流れ込んでいる。
今日の停泊場所は、その九頭竜川を少し入ったところにある。
川に入るにあたって、まず最初に起きる事は川と海が出会う場所に起きる波との遭遇。
波が起こる理屈は、川の流れと海の波がぶつかるからである。
複雑な波が起こるその場所は船にとって危険なポイントである。
九頭竜川は東から西へ流れている。
故に三国の漁師は、東から風が吹くと暗くなるギリギリまで海で仕事をするが
、逆に西から風が吹くと、早めに仕事を終え港に戻ってくるそうだ。
川がある港の制約のようにも思えるが、川があるからこそ山からの栄養が豊かな漁場をつくり出す。
川は危険故の制約と、豊かな恵の2つの側面を持っている。

危険ポイントを越えると波は落ち着き、今度は水の色が、海の色から川の色へ、済んだ青から鈍い緑へと変化する。
スピードメーターを見ると2ノットほど落ちている。考えてみれば当然である。
川を逆行しているからである。
そんな、初の川での航行を終え、停泊場所の九頭竜川河口に到着する頃には
、川の両岸に古く北前船の交易で栄えた三國湊の町並みが広がっていた。
舞鶴からここまでで出会った港の中で間違いなく一番大きな港である。

停泊後、種船の側に立つ1人のおじさんと出会った。
話を聞くと、種船を見にきたわけではなく、米蔵を見にきたことが分かった。
その方は、九頭竜川上流の鯖江に住み、米俵の文化を次世代に伝える活動をしている。
九頭竜川を登ると広い平野が広がっており、そこは米の産地である。
江戸時代、九頭竜川上流でつくられた米は米俵に詰められ、小さな川船に2俵ほど乗せて、三國湊である河口まで届けられた。
たくさんの川船で届けられた米俵は一度、三國湊の米蔵に納められる。
その後、北前船という大きな交易船に200俵ほど積込み、敦賀へ運ばれる。
敦賀から今度は琵琶湖に陸路で運ばれ、琵琶湖を渡って、その米は京都・大阪・奈良に届けられた。
そして、三國湊で米俵を下ろし空になった川船に、北前船の交易でやってきた北海道の昆布など、遠くの産物を積込み上流へ運んだ。
この方から聞いたのは米を中心とした話であったが、米に限らず工芸品や鉱物など、様々なものが運ばれ、
それと共に言語や文化、最新の情報も運ばれたのだろう。

そう考えると、当時、もっとも新しい食べ物や文化や情報、要は自分の土地にはないものは、船で川からやってきたということになる。
川は豊かさをもたらす中心にあり、川に意識を向けた暮らしがあったはずである。
その川は海へとつながっている。更に解釈を飛躍すれば、川は海の延長であるわけだから、陸へと深く伸び、複雑に入り込んだ海とも言える。

“川は細長い海である”。

ここ三國湊はそんな事を考えさせてくれる港である。
近くの港から港へ沿岸にアーチを描くような航海を続けてきた意識に対して、新たに深く陸に向かう航海の意識が生まれた。
川があるところに海はあるのである。

現在、三国のまちづくりの拠点となっており、種船停泊場所を紹介してくれた三國湊座へ挨拶に行き、
そこで紹介してもらった国民休暇村でテントを張った。

明日は、金沢まで3つほどある港での停泊と随伴船の交渉。
交換時期が来たギアオイル、エンジンオイルの交換する場所と業者探し。
宝箱のワークショップとに別れて行動する予定。

 

(テキスト:五十嵐靖晃)

記録

日時 6月14日(木)22:00 天気 晴れ
現在地 福井港(九頭竜川河口) 最高気温 25.0℃
緯度 36°12′792N 最低気温 18.6℃
経度 136°08′887E 湿度 64%
進行 第10航海 風向
航海航路 鷹巣港→福井港(九頭竜川河口) 風速 5m/s
気圧 1010.6hPa
航行距離 7.0海里(13km) 波高 0.5m
航行時速 7.0kt(13km/h) 降水量 0.0mm
出港時間 13:20 日の出 4:38
入港時間 14:30 日の入り 19:13
航海時間 1.1時間 満潮潮位 (10:23)26cm (**:**)**cm
船長 五十嵐 干潮潮位 (3:49)18cm (18:12)12cm
船員 喜多 木村 塩野谷 随伴船 漁栄丸(杉田)

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